「介護の仕事」と聞くと、どんな姿を思い浮かべるでしょうか。多くの人は、施設で高齢者の身のまわりのお世話をする——そんなイメージを持っているかもしれません。
でも、実際に家族の介護を経験してみて、私が驚いたのは、こんなにも多くの、いろいろな専門職の方々に支えられているのかということでした。介護の仕事は、思っていたよりずっと幅広く、そして奥深いものでした。
この記事は、介護の仕事に興味を持ちはじめた方へ向けて、“利用者側”だった私から見えた、介護の仕事の種類と役割をお伝えするものです。私自身は介護職の経験があるわけではありません。でも、サービスを受ける側だったからこそ見えた「それぞれの仕事の、ありがたさ」を、正直にお話ししたいと思います。
介護の仕事は、「身体介護」だけじゃない
まず知っておいてほしいのは、介護の仕事は「利用者さんの体を直接支える仕事」だけではない、ということです。
もちろん、食事や入浴、排泄を助ける身体介護は、介護の中心的な仕事です。でも、その周りには、ケアの計画を立てる人、医療を担う人、家族の相談に乗る人、送り迎えをする人、道具を選んでくれる人——たくさんの役割があり、それぞれが噛み合って、はじめて介護は成り立っています。「体力に自信がないから」とあきらめるのは早いかもしれません。ここからは、大きく4つのグループに分けて紹介します。
①直接ケアする仕事
利用者さんに直接向き合い、日々の暮らしや体調を支える、介護の中心的な仕事です。
ホームヘルパー(訪問介護員)
食事や排泄の介助、身の回りの支援全般を行う、在宅介護でいちばん多く関わる職種です。ケアプランに応じてシフトで複数の方が入り、雨の日も風の日も、自転車で訪問してくれます。
私が頼もしく感じたのは、本人の小さな変化によく気づいてくれること。気づいた変化はケアマネジャーに連携され、家族にも教えてもらえるので、本当に助かりました。訪問先は、住まいの設備も、同居者の有無も、一軒ずつまるで違います。だからこそ一人ひとりに合わせた対応が必要で、その場で一人で判断する場面も多い。施設とはまた違った責任感とやりがいのある仕事だと思います。
詳しくはホームヘルパーの仕事とはで紹介しています。
施設の介護職員
特別養護老人ホームなどの施設で、入居者のケアを担当します。訪問介護が「一軒ずつ違う家に、一人で伺う」のに対して、施設は設備やルールが標準化されていて、複数のメンバーで支え合う体制があります。
どちらが良い・悪いではなく、働き方の性質が違います。天候に関係なく個人宅を回る訪問介護に対し、施設は一つの場所で、チームで動く。「一人での判断が不安」という人には、施設のほうが働きやすいと感じることもあるようです。
詳しくは施設で働く介護職員の仕事で紹介しています。
デイサービスの職員
日中、利用者さんを預かり、食事や入浴、レクリエーションなどを提供します。私の印象では、コミュニケーションに長けた方が多い職種です。
「デイサービスに、また行きたい」「次はいつだろう」——本人がそう思えるような企画や運営を担ってくれています。利用者の一日を明るくする、大切な役割です。
詳しくはデイサービスで働くという仕事で紹介しています。
訪問看護師
医師の指示に従って、看護師が行える医療的なケアを、自宅で担当します。ヘルパーとは役割がはっきり異なり、どちらが上でも下でもなく、専門性が違うのだと、関わってみてよく分かりました。
年を重ねると、継続的な治療や持病への対処など、さまざまな健康上のトラブルを抱えるようになります。それらを把握しながら、決められた時間の中で適切な処置を行ってくれる。病院とは勝手の違う自宅での対応は大変だと思いますが、本当にありがたい存在でした。
詳しくは訪問看護師の仕事とはで紹介しています。
機能訓練指導員(リハビリ職)
理学療法士や作業療法士などが、体の機能を保ったり回復させたりするリハビリを担当します。体を動かす訓練だけでなく、安心して食事ができるように飲み込む力(嚥下)を見て訓練するなど、その役割は幅広いものでした。
何もしなければ衰えていく身体を、向上させたり、維持させたりする。生活に必要な動作について、目標を決めてゴールに向かって取り組んでくれるので、本人も少しゲーム感覚で楽しめる場面があったようです。
詳しくは介護のリハビリ職(機能訓練指導員)とはで紹介しています。
②支える・つなぐ仕事
直接介助はしなくても、介護全体を設計し、人と人、制度と人をつなぐ、司令塔のような仕事です。
ケアマネジャー(介護支援専門員)
介護において、もっとも重要な存在といっても過言ではありません。介護度に応じたケアプラン(介護サービスの計画)を作成し、利用者と事業者、医療と介護をつなぎます。
ケアプラン作りは、経験がものをいう仕事です。実務経験が求められる分、幅広いニーズに応えるプランを立てられる、頼れる専門職。「何を重視したプランにしたいか」を、遠慮なく相談するといいと思います。私にとっては、介護の”道案内人”のような存在でした。
ケアマネジャーの仕事やなり方は、ケアマネジャーってどんな仕事?利用者が「道案内人」と呼びたい理由で詳しく紹介しています。
生活相談員
施設の入り口で、利用者や家族の相談に乗り、入所や利用の手続き、関係機関との連絡調整を担う職種です。「施設の顔」とも呼ばれ、不安を抱えて相談に行った家族を、まず受け止めてくれる役割です。制度と利用者のあいだをつなぐ、大切な窓口になります。
詳しくは生活相談員の仕事とはで紹介しています。
サービス提供責任者(サ責)
訪問介護の現場をまとめる責任者です。ケアマネジャーが立てた計画をもとに、ヘルパーの手配や調整を行い、利用者とヘルパーの橋渡しをします。現場がスムーズに回るよう、裏で支えてくれている存在です。
詳しくはサービス提供責任者(サ責)の仕事で紹介しています。
③現場を回す仕事
意外と知られていませんが、介護の現場は、こうした仕事なしには回りません。「身体介護は不安」という方にも、入口の広い仕事です。
福祉用具専門相談員
数ある福祉用具の中から、利用者に最適なものを選んで提案してくれる専門職です。似たような製品がたくさんある中で、それぞれの特長を踏まえて説明し、導入時も丁寧にサポートしてくれました。
コミュニケーション能力を活かし、製品の良さを理解したうえで、利用者のニーズに合った提案をする——その姿は、いい意味で”腕のいい営業職”のようでもあります。人と話すのが好きで、モノの良さを伝えるのが得意な人に、向いていそうな仕事です。
詳しくは福祉用具専門相談員の仕事で紹介しています。
送迎ドライバー
デイサービスなどへの送り迎えを担当します。運転が中心で、身体介護の負担は比較的軽め。利用者さんを安心・安全に送り届けてくれる、一日の始まりと終わりを支える存在です。
地域によっては道幅が狭い場所もありますが、熟練の技術で対応してくれます。普通自動車免許があれば始められる場合も多く、シニア世代の活躍も目立ちます。
詳しくは介護の送迎ドライバーという仕事で紹介しています。
介護事務
介護報酬の請求業務(レセプト)や、書類作成、受付などを担う事務職です。パソコンでの作業が中心で、デスクワークで介護に関わりたい人に向いています。制度を支える、縁の下の力持ちです。
詳しくは介護事務の仕事とはで紹介しています。
介護助手・介護補助
清掃、ベッドメイキング、配膳、見守りなど、資格がなくてもできる業務を担当します。無資格・未経験から介護の世界に入る、いちばんの入口。ここから経験を積み、資格を取って介護職員へ、という道もよくあるパターンです。
④これからの介護の仕事
最後に、これから広がっていく分野についても触れておきます。
いま、介護の世界ではIT化・DX(デジタル化)が、急速に進もうとしています。国も、介護現場へのテクノロジー導入を後押しする方針を打ち出しています。ケア記録のデジタル化、見守りセンサーやカメラの導入・運用、事業所どうしのデータ連携——こうした「テクノロジーで介護をよくする」動きが、現場で本格化しています。
いまはまだ、専任の担当者を置く事業所は多くなく、既存の職員が兼ねているのが実情です。でも、「介護は分かるけれど体力仕事は不安」「ITやデータの知識を活かしたい」という人にとって、これから可能性が広がる領域だと言えます。介護とテクノロジーの両方に関心がある人には、注目してほしい方向です。
詳しくは介護×IT・DXという新しい仕事で紹介しています。
早わかり:自分に合う仕事を見つけるヒント
「たくさんあって、どれが自分に向いているか分からない」という方へ。ざっくりとした目安を、表にまとめてみました。
| 職種 | 未経験から | 身体の負担 | こんな人に |
|---|---|---|---|
| ホームヘルパー | 入りやすい | 中〜大 | 一人ひとりと向き合いたい |
| 施設の介護職員 | 入りやすい | 中〜大 | チームで支え合いたい |
| デイサービス職員 | 入りやすい | 中 | 人を楽しませるのが好き |
| 訪問看護師 | 看護師資格が必要 | 中 | 医療の専門性を活かしたい |
| リハビリ職 | 専門資格が必要 | 中 | 回復や自立を支えたい |
| ケアマネジャー | 経験を積んでから | 小 | 全体を見て調整したい |
| 生活相談員 | 資格要件あり | 小 | 相談ごとを受け止めたい |
| 福祉用具相談員 | 研修修了で可 | 小 | 提案・営業が好き |
| 送迎ドライバー | 入りやすい | 小 | 運転が得意 |
| 介護事務 | 入りやすい | 小 | デスクワーク中心がいい |
| 介護助手・補助 | いちばん入りやすい | 小〜中 | まず介護の世界を知りたい |
あくまで目安ですが、「身体の負担が小さい仕事」も、「未経験から入れる仕事」も、こんなにあります。体力に自信がなくても、介護に関わる道はきっと見つかります。
どの仕事も、社会に絶対に必要
家族の介護を経験して、私が心から実感したことがあります。それは、ここに挙げたどの仕事も、誰かの暮らしと尊厳を、確かに支えているということです。
介護の仕事は、決して楽なことばかりではないと思います。それでも、支えてもらう側から見た介護職の方々は、専門性と優しさをあわせ持った、かけがえのない存在でした。これほど「ありがとう」を伝えたくなる仕事も、そう多くはありません。
介護の仕事に、興味を持ったら
もし、この記事を読んで「介護の仕事、いいかもしれない」と少しでも思ったなら、ぜひ一歩、踏み出してみてください。
介護の世界は、無資格・未経験からでも入れる入口がたくさんあります。介護助手から始める、まずは「介護職員初任者研修」という入門資格を取ってみる、いろいろな職種の求人を眺めてみる——始め方は人それぞれです。
まずは、どんな仕事があるのか、どんな条件で募集されているのかを、求人サイトなどで実際に見てみるところからでも十分です。自分に合った関わり方が、きっと見つかります。家族の介護に、新しい続け方を——そして、介護を”支える側”にも、あなたに合った場所が、きっとあります。


