デイサービスに通う朝、家の前まで車で迎えに来てくれる人がいます。「おはようございます」と笑顔で声をかけ、安全に施設まで送り届け、夕方にはまた家まで送ってくれる。介護における送迎ドライバーは、利用者の一日の始まりと終わりを支える、大切な存在です。
この記事では、利用者側から見た送迎ドライバーの仕事と、これからこの仕事を目指す方に向けた、リアルな情報をお伝えします。「介護に興味はあるけれど、直接の身体介護は自信がない」という方にも、ぜひ知ってほしい仕事です。
送迎ドライバーは、「介護」と「自宅」をつなぐ役割
送迎ドライバーの主な仕事は、デイサービスやデイケアなどに通う利用者を、自宅と施設のあいだで送り迎えすることです。朝、利用者の家を回って施設へ送り、サービスが終わる夕方に、また自宅まで送り届けます。
直接的な身体介護をするわけではありません。でも、この仕事は「施設」と「自宅」をつなぐ、なくてはならない役割を担っています。送迎がなければ、通いたくても通えない人がたくさんいます。利用者にとっては、家から一歩踏み出す最初の相手であり、一日の終わりに家へ帰る安心を届けてくれる存在。介護というチームの中で、確かな一角を支える仕事です。
普通免許ではじめられる。未経験・シニアも活躍
送迎ドライバーの大きな魅力は、始めるハードルが低いことです。必要な資格は、基本的に普通自動車免許(AT限定でも可という求人が多い)だけ。介護の資格は必須ではありません。
そのため、未経験からのスタートや、シニア世代の転職も多い職種です。求人を見ると、「未経験歓迎」「50代・60代活躍中」といった言葉が並びます。運転経験を活かして、定年後の新しい仕事として選ぶ人も少なくありません。
「いきなり利用者さんを乗せるのは不安」という方も、心配はいりません。多くの職場では、入社後しばらくは先輩スタッフが同乗して教えてくれたり、ドライバーと介護職員の2名体制で運行したりと、サポート体制が整っています。少しずつ慣れていける環境があります。
高齢者を乗せる、ということ
一般の運転の仕事と、送迎ドライバーが少し違うのは、乗せるのが高齢の利用者だということです。ここには、この仕事ならではの心づかいがあります。
まず、より慎重な運転が求められます。急ブレーキや急なカーブは、体への負担が大きいからです。また、高齢の方は乗り降りに時間がかかったり、体調によって急に予定が変わったりすることもあります。「時間通りに、きっちり」だけでは回らない場面も出てきます。
だからこそ、予期せぬことにも、落ち着いて対応できる気持ちのゆとりが大切になります。運転技術そのものより、こうした「人を乗せる」ことへの思いやりが、この仕事の本質なのかもしれません。
「大きな車は不安」という人へ ── ハイエースは、意外と運転しやすい
送迎に使われる車両は、ハイエースやキャラバンといった、少し大きめのワンボックスカーが多くなります。「あんな大きい車、運転できるだろうか」と不安に思う方も、いるかもしれません。
でも、利用者としてたくさんの送迎車に接してきた経験から言うと、こうした車は、意外と運転しやすいという声をよく聞きます。理由はいくつかあります。運転席が高い位置にあるので前方が見渡せて、視野が広く、注意を向けられる範囲が広がるのです。乗用車より周囲の状況を把握しやすい、という面があります。
「内輪差(曲がるときの前後輪の軌道の差)が大きいのでは」という心配も、慣れればまず問題なくなります。最初は難しく感じても、運転を重ねるうちに、自然と車両感覚が身についていきます。大きさへの不安だけで、この仕事を諦めてしまうのは、もったいないかもしれません。
ロゴ入りの車は、地域の「顔」
もうひとつ、送迎ドライバーならではの特徴があります。それは、送迎車には施設名やロゴが入っていることが多い、ということです。
これは「地域から見られている」ということでもあります。少し緊張するかもしれません。でも、見方を変えれば、安全運転で、マナーよく運行するだけで、それがそのまま施設への良い印象につながるということです。丁寧な運転をするドライバーの姿は、「あの施設は、ちゃんとしているな」という信頼を、地域に広げていきます。
送迎ドライバーは、ただ車を運転するだけの仕事ではありません。施設を代表して地域を走る、いわば「顔役」。そう考えると、ハンドルを握る仕事に、ひとつ誇りが加わるように思います。
働き方と、給料のこと
送迎ドライバーは、働き方の自由度が高いのも魅力です。送迎が必要なのは主に朝と夕方なので、「朝だけ」「夕方だけ」「週1日から」といった短時間・少日数の働き方ができる求人が多くあります。副業やWワーク、扶養内での勤務がしやすく、自分のペースで無理なく続けられます。そして、基本的に日勤のみで、夜勤がありません。生活リズムを保ちやすく、プライベートと両立しやすい仕事です。
気になる給料を、働き方別に整理してみましょう。
- パート・アルバイト:時給はおよそ900〜1,400円が目安です。地方では900円台、都市部では1,000〜1,400円ほどと、地域による差があります
- 正社員(月給):月給はおよそ16〜27万円、年収に換算すると平均で約430万円前後が目安です。求人のボリューム層は年収400万円前後で、経験や勤務先によって、300万円台から600万円台まで幅があります
ポイントは、送迎だけを担当するか、ほかの業務も兼ねるかで、給料が変わってくることです。送迎のない日中の時間帯に、介護補助や車両の管理などを兼務すると、その分、月給は上がる傾向があります。実際、施設管理などを含めて月給24〜28万円ほどを提示する求人も見られます。
収入を上げていく道すじ
「長く働いて、収入も上げていきたい」と考えるなら、いくつかの道があります。
ひとつは、資格を取ることです。運転だけでなく、乗り降りの介助までしっかり担えるよう「介護職員初任者研修」を取得すると、任される業務の幅が広がり、待遇アップにつながります。
もうひとつは、介護の仕事へとステップアップしていく道です。送迎ドライバーを入口に、介護職員として経験を積み、さらにサービス提供責任者や施設の管理者といった役職を目指せば、年収は大きく上がっていきます。たとえば、訪問介護をまとめるサービス提供責任者になると、年収は440万円ほどが目安となり、管理者クラスでは年収500万円以上を提示する求人も少なくありません。運転から介護の世界に入り、キャリアを広げていく——そんな将来像も描ける仕事です。
利用者として伝えたい、送迎ドライバーの魅力
最後に、利用者の側から感じてきたことを、お伝えします。
送迎ドライバーさんは、一日の始まりに、笑顔で迎えに来てくれる人でした。その明るい挨拶に、どれだけ元気をもらったか分かりません。狭い道でも、熟練の技術で安全に運んでくれる。その安心感は、利用者にとっても家族にとっても、大きなものでした。
「体力に自信がないから、介護の仕事は難しいかも」——そう感じている方にとって、送迎ドライバーは、運転という得意を活かして介護に関われる、うれしい入口です。人の役に立ちながら、地域を走る。もし興味があるなら、まずは送迎ドライバーの求人を眺めてみてください。介護の仕事全体については、介護の仕事ってどんな種類?利用者側から見えた、それぞれの役割でも紹介しています。あわせてどうぞ。
家族の介護に、新しい続け方を。そして、その暮らしを運転で支える送迎ドライバーという仕事に、あなたが関心を持ってくれたら、利用者だった一人として、とてもうれしく思います。


