訪問看護師の仕事とは?介護と医療の境目を支えてくれる人

訪問看護師の仕事とは?介護と医療の境目を支えてくれる人

在宅で家族の介護をしていると、体調のことや持病のことで、不安になる場面が何度もあります。そんなとき、医療の面から支えてくれたのが、訪問看護師さんでした。

看護師といえば、病院で働く姿を思い浮かべる人が多いと思います。でも、この人たちは「病院」ではなく、「家に来る」ことを選んでいる。利用者だった私は、ふと「なぜだろう」と思ったことがあります。この記事では、利用者から見た訪問看護師の仕事と、その選択の意味について、私なりに感じたことをお伝えします。

訪問看護師は、暮らしの中に「医療」を届ける人

訪問看護師は、医師の指示のもとで、利用者の自宅を訪ねて医療的なケアを行う看護師です。健康状態のチェックから、点滴や注射、床ずれの処置、医療機器の管理まで、その内容は多岐にわたります。

年を重ねると、人は継続的な治療が必要になったり、いくつもの持病を抱えたりするようになります。私の家族もそうでした。訪問看護師さんは、そうした一人ひとりの体の状態をきちんと把握したうえで、決められた時間の中で、的確に処置をしてくれました。病院とは勝手の違う自宅で、限られた道具で対応するのは大変だと思います。それでも毎回、安心を運んできてくれる。本当にありがたい存在でした。

病院の看護と、何が違うのか ──「治す」から「寄り添う」へ

訪問看護について考えるとき、私がいちばん心を動かされたのが、この点です。病院の看護と、在宅の看護は、その”性質”が少し違うのではないかということ。

病院、とくに急性期の医療は、多くの場合「病気やケガを治して、回復させる」ことをゴールに進みます。治療が成功すれば退院し、患者さんは日常に戻っていく。分かりやすいゴールがある医療です。

一方で、在宅で行われる看護は、慢性的な病気とつきあいながら、その人の暮らしそのものに、継続して寄り添う医療だと感じます。「完全に治す」ことがゴールとは限りません。持病とうまくつきあいながら、住み慣れた家で、その人らしく過ごし続けられるように支える。ときには、人生の最期まで伴走することもあります。

これは、想像するだけでも、とても難しい仕事だと思います。「治った」という明快な達成感が、いつもあるわけではないからです。それでも、利用者だった私の目には、訪問看護師さんたちは、「治す」こととは別の何か——その人の生活や、尊厳や、穏やかな時間を守ること——を、大切にしているように見えました。あくまで私の勝手な受け止めですが、だからこそ、この仕事には、病院とはまた違う、深いやりがいがあるのではないかと感じています。

ヘルパーとは「上下」ではなく、「役割」が違う

もうひとつ、利用者として関わって分かったことがあります。それは、訪問看護師とホームヘルパーは、どちらが上でも下でもなく、「役割」が違うということです。

ホームヘルパーは、食事や入浴、掃除や買い物といった生活の支援を担います。訪問看護師は、医師の指示のもとで医療的なケアを担います。この二つは、まったく別の専門性です。どちらが偉いという話ではまるでなく、両者がそれぞれの役割を持ち寄り、連携することで、暮らしと体の両方が支えられる。その様子を間近で見て、チームで支えるとはこういうことか、と実感しました。

具体的に、どんなことをするのか

訪問看護師の仕事は、幅広いものです。主なものを挙げると、次のようになります。

  • 健康状態の観察(血圧・体温・脈拍などのチェック)
  • 服薬の管理・指導
  • 点滴や注射などの医療処置
  • 床ずれ(褥瘡)の予防とケア
  • 在宅酸素などの医療機器の管理
  • 本人・家族への療養上のアドバイスや、心のケア
  • 人生の最期を自宅で迎えるための看取りの支援

病院のように設備がすべて揃っているわけではないので、その家にあるもので工夫し、臨機応変に対応する力が求められます。1日におよそ4〜5件の家を訪問するのが一般的です。

訪問看護師になるには

訪問看護師になるために必要なのは、正看護師、または准看護師の資格です。これ以外に、特別な資格は必要ありません。

かつては「病棟で3〜5年の経験を積んでから」というのが一般的でしたが、状況は変わってきています。訪問看護の需要が高まり、人材が求められている今、経験を問わない求人や、新卒を歓迎するステーションも増えています。同行訪問や研修などの教育体制が整った職場を選べば、訪問看護がはじめてでも、安心して経験を積んでいけます。

給料と働き方

訪問看護師は、働きやすさと収入のバランスが良いのも特徴です。厚生労働省の調査などをもとにすると、平均的な年収はおよそ550万円前後とされ、夜勤がない働き方でも、しっかりとした収入が期待できます。

勤務は日勤が中心で、残業が少なく、土日休みのステーションも多くあります。中には、自宅から直接利用者宅へ向かい、そのまま帰宅できる「直行直帰型」を取り入れている職場もあります。ワークライフバランスを大切にしたい人に向いた働き方です。

ひとつ確認しておきたいのが、「オンコール」の有無です。多くのステーションは24時間対応の体制をとっており、夜間や休日に、緊急の連絡や訪問が入ることがあります。その頻度や負担は職場によってかなり違うので、求人を選ぶときには、オンコールの体制を必ず確認するとよいでしょう。

需要は、伸び続けている

訪問看護は、これからますます必要とされる分野です。訪問看護ステーションの数は、2010年の約5,700か所から、2024年には約17,300か所へと、14年ほどで約3倍に増えています。高齢化が進み、「住み慣れた家で過ごしたい」という願いが広がる中で、そのニーズは今後も高まっていくと見られています。将来性という意味でも、心強い選択肢です。

なぜ、訪問看護なのか

最後に、利用者として感じた、訪問看護師の魅力を伝えさせてください。

病院という場所でも、看護師は必要とされています。それでも、あえて「家に来る」ことを選ぶ人たちがいる。その理由は、きっと一人ひとり違うのだと思います。でも、私が家族の介護を通じて見てきた訪問看護師さんたちは、目の前の一人と、じっくり、深く向き合うことを、大切にしているように見えました。

大勢の患者さんを一度に看る病院とは違い、訪問看護では、その人の暮らしまるごとに寄り添えます。「治す」だけでなく、「その人らしい毎日」を守る看護。それは簡単な仕事ではないけれど、だからこそ得られるものも、きっと大きいはずです。もし、患者さんとじっくり向き合う看護がしたいと感じているなら、訪問看護は、その願いに応えてくれる場所かもしれません。

介護の仕事全体については、介護の仕事ってどんな種類?利用者側から見えた、それぞれの役割でも紹介しています。あわせてどうぞ。家族の介護に、新しい続け方を。そして、その暮らしを医療の面から支える訪問看護師という仕事に、あなたが関心を持ってくれたら、利用者だった一人として、とてもうれしく思います。

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