介護のなかで、私が「すごいな」と感じた場面のひとつが、リハビリの時間でした。専門家が来ると、本人がぐっと集中して、生き生きとした表情を見せる。そして終わったあとには、やりきったような、いい顔をしている。年を重ねても、体を動かすことは、こんなにも心身にいいのかと、そばで見ていて実感しました。
この記事では、利用者側から見た介護のリハビリ職の仕事と、これからこの仕事を目指す方に向けた情報をお伝えします。「できることを増やし、守る」——そんなやりがいのある専門職の姿を、私の体験も交えて紹介します。
リハビリ職は、「できること」を増やし、守る専門家
介護施設などでリハビリを担当する専門職は、「機能訓練指導員」と呼ばれます。これは特定の資格名ではなく、リハビリを担う「役割」の呼び名で、後で紹介するいくつかの国家資格を持つ人が、その役割を担います。
仕事の中心は、利用者一人ひとりの状態に合わせて機能訓練を行い、できる限り自分の力で日常生活を送れるように支援することです。何もしなければ、体の機能は少しずつ衰えていきます。それを、向上させたり、維持したりする。私の家族も、リハビリのおかげで「できること」を保ち続けられました。まさに、暮らしの土台を支えてくれる存在です。
3つのリハビリ職 ── PT・OT・ST
リハビリの専門職には、代表的なものが3つあります。それぞれ専門とする領域が違うので、整理してみましょう。
理学療法士(PT)は、立つ・歩く・起き上がるといった、生活の土台となる基本動作のリハビリを担当します。運動療法などを通じて、体の動きそのものを支えます。
作業療法士(OT)は、着替え・料理・字を書くといった、より生活に即した応用動作のリハビリを担当します。さらに、心のケアも大切な役割で、その人が前向きに暮らせるよう支援します。
言語聴覚士(ST)は、話す・聞くといったコミュニケーションの機能に加えて、「飲み込む力」(嚥下)のリハビリを担当します。年を重ねると、食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなることがあり、これは誤嚥(ごえん)などのリスクにもつながる、とても大切な領域です。
体験して分かった、それぞれの専門性
この3職種の違いは、言葉で説明されてもピンと来にくいかもしれません。でも、私は家族の介護を通じて、その専門性を実際に目の当たりにしました。
印象に残っているのが、言語聴覚士(ST)の方による、嚥下の訓練です。「食べる」「飲み込む」という、当たり前だと思っていた動作が、年齢とともに難しくなる。それを専門的に見て、安全に食事ができるように訓練してくれる。食べることは生きる喜びそのものなので、この支援には本当に助けられました。「こういう専門家がいるのか」と、驚いたのを覚えています。
もうひとつ、理学療法士(PT)の方との運動も忘れられません。年を重ねて衰えていく体を、うまく使う練習を重ねていくのですが、PTの方が「1、2、1、2」と声をかけ、本人もそれに合わせて体を動かす。二人三脚のようなその時間は、見ていて温かいものでした。そして、訓練が終わったあとの、本人の「ふーっ」という、やりきった顔。あの表情は、今でも忘れられません。いくつになっても、体を動かすことは、心にも体にもいいのだと、しみじみ感じました。
病院のリハビリと、介護のリハビリは目的が違う
リハビリと聞くと、病院で行うものをイメージするかもしれません。でも、病院のリハビリと、介護の現場でのリハビリは、目的が少し違います。
病院、とくに急性期のリハビリは、病気やケガを治し、機能を回復させて、社会復帰することを目指します。一方、介護の現場での機能訓練は、いまの生活機能を維持し、これ以上の重度化を防ぎ、その人らしい暮らしを続けられるようにすることが目的です。「完全に治す」ことよりも、「生活に密着して、できることを守る」ことに重きが置かれます。
だからこそ、介護のリハビリ職には、その人の暮らしや、やりたいことに寄り添う姿勢が求められます。目標を一緒に決めて、そこに向かって少しずつ進んでいく。本人が前向きに、ときにゲームのように楽しみながら取り組めるよう工夫するのも、この仕事の腕の見せどころです。
リハビリ職になるには
介護の現場でリハビリ職(機能訓練指導員)として働くには、定められた国家資格のいずれかを持っている必要があります。
中心となるのは、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)の3つの国家資格です。いずれも、養成校(大学や専門学校)で3〜4年学び、国家試験に合格して取得します。PTとOTの国家試験の合格率は例年80〜90%台ですが、STは比較的新しい資格で、合格率はやや低めの難関とされています。
このほか、機能訓練指導員として認められる資格には、看護師・准看護師、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、鍼灸師などもあります。すでにこうした資格を持っている方が、リハビリ職として活躍する道もあります。
給料と、キャリアの広がり
リハビリ職の給料は、専門性が評価される分、比較的しっかりしています。介護分野の機能訓練指導員の平均月給は、常勤でおよそ35万円ほど。求人では月給20〜35万円あたりがボリューム層で、なかでもPT・OTの有資格者は高待遇になる傾向があります。勤務先や経験年数、地域によっても変わってきます。
キャリアの広げ方も、いろいろあります。認知症ケアや特定の疾患に特化して専門性を深める道、施設の管理者や施設長といったマネジメント職に進む道、さらには独立・開業する道もあります。国家資格という土台があるからこそ、長く安定して働き、着実にステップアップしていける仕事です。高齢化が進むなか、リハビリ職の需要は今後も高まっていくと見られています。
利用者として伝えたい、リハビリ職の魅力
最後に、支えてもらう側として感じた、リハビリ職の魅力をお伝えします。
リハビリ職は、「できた!」という喜びを、本人と一緒に作れる仕事です。昨日できなかったことが、今日できるようになる。その小さな一歩を、隣で支え、一緒に喜べる。「1、2」と声をかけあい、終わったあとの晴れやかな顔を引き出す——それは、人の生きる意欲そのものを、支える仕事だと思います。
体を動かすこと、食べること、話すこと。当たり前に思える一つひとつを守り、その人らしい毎日を支える。もし、人の「できる」を支える仕事に興味があるなら、リハビリ職はとてもやりがいのある選択肢です。介護の仕事全体については、介護の仕事ってどんな種類?利用者側から見えた、それぞれの役割でも紹介しています。あわせてどうぞ。
家族の介護に、新しい続け方を。そして、その暮らしをリハビリで支える専門職に、あなたが関心を持ってくれたら、利用者だった一人として、とてもうれしく思います。


