福祉用具を賢く使い倒す

介護ベッド、車椅子、歩行器、手すり——。「福祉用具」と聞くと、なんとなく「介護される人のための道具」というイメージがありませんか。

でも、本来、福祉用具は本人が今までの暮らしを続けるための道具です。一人で起き上がれるようにする、安全に歩けるようにする、自分でトイレに行けるようにする。本人の「できる」を支える道具であって、結果として、家族の介護負担も軽くなります。

しかも、要介護認定を受けていれば、介護保険で月数百円〜数千円から借りられる。買えば数万円〜数十万円する用具が、無理なく使えるんです。これを使わない手はありません。

この記事では、福祉用具レンタルの仕組みから、賢く使い倒すコツまでをお伝えします。

福祉用具レンタルとは

福祉用具レンタルは、介護保険を使って、必要な道具を月額で借りられるサービスです。

仕組みの基本

要介護認定を受けると、要介護度に応じて月々の介護保険の利用枠(支給限度額)が決まります。福祉用具のレンタル費用は、その枠内で使われます。自己負担は、所得に応じて1〜3割(2026年現在)。

たとえば、月額3,000円の介護ベッドを借りる場合:

  • 介護保険を使わず買うと:数十万円
  • 介護保険レンタル(1割負担):月300円
  • 介護保険レンタル(3割負担):月900円

買うより圧倒的に安く、必要な期間だけ使えます。

福祉用具専門相談員に相談できる

福祉用具レンタルには、福祉用具専門相談員という資格を持った人が必ず関わります。事業所の担当者が家を訪問して、本人の状態・住環境を見ながら、最適な用具を提案してくれます。

「うちの家の廊下、手すりつけられる?」「ベッドはどの高さがいい?」「車椅子は外でも使うから、こういう機能がほしい」——そんな相談を、専門家として受け止めてくれます。

何が借りられるか

介護保険でレンタルできる福祉用具は、主に13品目あります。

主な対象品目

  • 車椅子(自走用・介助用・電動)
  • 車椅子付属品(クッション、電動補助装置など)
  • 特殊寝台(介護ベッド)
  • 特殊寝台付属品(マットレス、サイドレールなど)
  • 床ずれ防止用具(エアマットなど)
  • 体位変換器
  • 手すり(工事不要のもの)
  • スロープ(工事不要のもの)
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ(松葉杖を除く)
  • 認知症老人徘徊感知機器
  • 移動用リフト(つり具を除く)
  • 自動排泄処理装置

要介護度によって、借りられる品目に制限があります(軽度の方は、一部の品目しか借りられない)。詳しくはケアマネさんに相談してください。

レンタル対象外で「購入」になるもの

肌に直接触れたり、衛生面の問題で他人と共有しにくいものは、レンタルではなく購入になります。これらは「特定福祉用具販売」として、介護保険で年間10万円まで、1〜3割負担で買える仕組みです。

  • 入浴用補助用具(シャワーチェア、浴槽内椅子など)
  • ポータブルトイレ
  • 腰掛便座
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 簡易浴槽

2024年からは、一部の品目(歩行器・歩行補助つえ・手すり・スロープなど)で「レンタルか購入か選べる」制度が始まりました。長く使うことが見込まれるなら購入、状態が変わる可能性があるならレンタル、と選択肢が広がっています。

本人の暮らしを支えるという視点

ここがこの記事で一番伝えたいことです。

福祉用具を「介護される人のための道具」と捉えると、本人にとってはネガティブなものに見えます。「介護される身になった」という、受け入れがたい現実の象徴になりかねません。

でも、捉え方を変えてみてください。福祉用具は、本人の「できる」を支える道具です。

  • 手すりがあれば、一人で廊下を歩ける
  • 介護ベッドがあれば、自分で起き上がれる
  • 歩行器があれば、自分の足で散歩できる
  • 車椅子があれば、家族と一緒に外出できる
  • 床ずれ防止用具があれば、安心して横になれる

これは「介護される」ではなく、「自分のことを自分でする」を続けるための道具なんです。

💡 ここがポイント
福祉用具は、本人の自立を支える道具です。家族にとっても、本人が一人でできることが増えれば、介護の負担はぐっと軽くなります。本人の「できる」と、家族の「無理しない」は、両立できます。福祉用具は、その両方を支えてくれる存在です。

賢く使い倒すコツ

「使い倒す」という言葉を選んだのは、福祉用具レンタルには、ただ借りるだけじゃもったいない使い方があるからです。

コツ1 試してから決められる

レンタルだからこそ、合わなかったら変えられる。これが大きな価値です。

  • 「介護ベッドを借りてみたけど、本人がうまく使えない」→ 別のタイプに変更
  • 「歩行器を借りたけど、本人には大きすぎる」→ サイズ違いに変更
  • 「車椅子を借りたけど、家の廊下を曲がりにくい」→ 小回りが効くタイプに変更

買ってしまうと「合わない」と感じても、なかなか変えられません。レンタルなら、本人に本当に合うものを探すプロセスが取れます。

コツ2 状態が変わったら、すぐ見直す

介護の状態は、時間とともに変化します。福祉用具も、それに合わせて見直しましょう。

  • 歩けるようになったら → 歩行器を返却して、つえだけに
  • 立てなくなったら → 車椅子を借りる
  • 床ずれができそうになったら → エアマットに変更

レンタルだから、必要な時に必要なものを、不要になったら返す。身軽に変えられるのが、賢い使い方です。

コツ3 専門相談員を頼り倒す

福祉用具専門相談員は、こちらが遠慮しない方が、いい仕事をしてくれます。

  • 「家の中で本人が転びやすい場所、見てもらえますか」
  • 「夜中にトイレに行くのが大変。何かいい方法ない?」
  • 「車椅子を借りたいけど、家の玄関、車椅子で出られる?」

家を訪問して、本人と一緒に動きながらアドバイスをくれます。「ここで悩んでます」を、どんどん伝えるのが、福祉用具を使い倒す近道です。

💡 ここがポイント
福祉用具の事業所は、定期的にメンテナンス(点検・消毒)もしてくれます。借りている間に故障したら、すぐ交換してもらえます。買うとメンテナンスは自己負担になるけど、レンタルなら全部込み。借りる方が、結果的にラクで安心な場合が多いです。

コツ4 カタログを開く時間も、介護の楽しみ

不謹慎に聞こえるかもしれませんが、書かせてください。福祉用具のレンタルは、介護生活の中のちょっとした楽しいイベントでもあります。

事業所から届くカタログを本人と一緒に開いて、「どれがいい?」と相談する時間。豊富な品物の中から、本人の好みや家の雰囲気に合うものを選ぶ。これって、ちょっとしたカタログショッピングの楽しさがあります。

しかも、最近の福祉用具は本当によく考えられていて、機能性の高さに感心することが多い。「こんな工夫があるんだ」「これは安全だね」と、新しい発見の連続です。安全への配慮も行き届いていて、見ているだけで「介護の世界はここまで進化したんだ」と刺激を受けます。

大型の福祉用具(介護ベッドや車椅子など)が届いた日は、ちょっとした模様替えの日。新しい家具が増えたみたいに、部屋の雰囲気が変わります。

介護は重い話になりがちです。でも、こういう小さな楽しみを家族と本人で共有するのも、長く続けるための大事な栄養。たまには気軽に楽しんでいいんです。「ゆる介護」を名乗っているサイトなので、こう言わせてください——介護にも、楽しみはあっていいんです。

利用の流れ

福祉用具レンタルを使うには、以下の流れになります。

  1. ケアマネジャーに相談:「こんな道具がほしい」「こんな場面で困っている」と伝える
  2. 福祉用具事業者を選ぶ:ケアマネさんが事業者を紹介してくれる
  3. 専門相談員が家を訪問:本人の状態・家の様子を見て、適切な用具を提案
  4. 試して決める:可能なら、いくつか試してから決める
  5. 契約・配送:契約後、用具が自宅に届く
  6. 使い始める:専門相談員が使い方を説明してくれる
  7. 定期的に見直す:状態が変わったら、随時相談・変更

要介護認定を受けていない方は、福祉用具のレンタル・販売店で直接相談できますが、その場合は介護保険が使えないので、全額自己負担になります。まず要介護認定を受けることが、賢い使い方の入口です。

おわりに

福祉用具レンタルを賢く使い倒すポイントは、

  1. 福祉用具は本人の暮らしを支える道具。家族介護も助ける
  2. 試してから決められる、状態が変わったら変えられる
  3. 専門相談員を頼り倒す
  4. カタログを開いて選ぶ時間も、介護のちょっとした楽しみ
  5. 介護保険でレンタルすれば、月数百円〜数千円から

「介護のための道具」と思って身構えなくて大丈夫です。福祉用具は、本人が今までの暮らしを続けるための、頼もしい味方。介護保険で安く使えるんだから、使わない手はありません。

このサイト「ゆる介護」は、3本柱のひとつに「福祉を使い倒す」を掲げています。福祉用具レンタルは、まさにその象徴。遠慮せず、賢く、思い切り使い倒してください

このサイトでは、福祉用具のほかにも、訪問介護デイサービス訪問看護ショートステイなど、家族の介護を支えるサービスを、一つずつご紹介しています。

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