家族の介護が必要になった時、まず頭をよぎる不安のひとつが、お金の話ではないでしょうか。「介護はお金がかかる」と耳にすることはあっても、実際に何に、どれくらいかかるのか、見当がつかない方は多いはずです。
ただ、最初にお伝えしたいのは、介護費用は思っているよりも、制度で支えられているということ。介護保険、高額介護サービス費、各種給付金など、知っているだけで負担をぐっと軽くできる仕組みが揃っています。
この記事では、介護費用の全体像と、知っておきたい制度をまとめてご紹介します。考え方の基本を押さえれば、介護費用への不安はずいぶん和らぐはずです。
介護費用、考え方の基本
具体的な数字を見る前に、ひとつだけ大事な考え方をお伝えします。
介護費用は、原則として本人の収入・資産でまかなう——これが基本です。
本人の年金収入、これまで貯めてきた貯蓄、所有している資産。これらの範囲内で、無理のないケアプランを組むのが、長く続けるためのコツです。
「家族として支えたい」という気持ちから、子世代が自分のお金を出して介護費用に充てるケースもあります。でも、これを続けると、子世代の家計が圧迫されて、結局、誰も幸せにならない結果になりがちです。家族が無理せず続けられる介護を目指すなら、本人のお金でまかなえる範囲を見極めることが、何より大切です。
💡 ここがポイント
「親の介護費用を、子のお金で出すのは当然」と考えなくて大丈夫です。本人の年金・貯蓄・資産の範囲で、無理のないケアプランを組むのが基本。これは冷たい話ではなく、家族全員が長く続けられるための、現実的な選択です。
介護費用、何にいくらかかるのか
介護にかかるお金は、大きく在宅介護と施設介護で違います。
在宅介護の場合
自宅で介護を続ける場合、主にかかる費用は次の通りです。
- 介護保険サービスの自己負担(訪問介護・デイサービス・福祉用具レンタルなど):月額数千円〜数万円
- 介護保険外の支出(おむつ代、サプリ、宅配サービスなど):月額数千円〜数万円
- 住宅改修費(手すりの設置、段差解消など):一時的に数万円〜数十万円
要介護度や利用するサービスにもよりますが、月額3万〜10万円程度が、在宅介護費用の目安と言われています。
施設介護の場合
施設に入居する場合は、施設の種類によって大きく変わります。
- 特別養護老人ホーム(特養):月額10万〜15万円程度
- 介護老人保健施設(老健):月額10万〜15万円程度
- 介護付き有料老人ホーム:月額15万〜40万円程度(施設による幅が大きい)
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住):月額10万〜25万円程度
入居一時金が必要な施設もあり、これは数十万円〜数千万円と幅が大きいです。
💡 ここがポイント
在宅介護は施設介護よりも費用が安く済むことが多いです。本人が自宅で過ごしたい希望があり、家族にも無理がなければ、まず在宅介護を検討するのが現実的です。施設介護を検討するのは、本人の状態・家族の状況・経済力を総合的に見てから。
介護保険の自己負担、どれくらい?
介護費用の中心になるのが、介護保険サービスの自己負担です。
要介護認定を受けると、訪問介護・デイサービス・訪問看護・福祉用具レンタルなどのサービスを、所得に応じて1〜3割の自己負担で利用できます(2026年現在)。
自己負担割合の判定
- 1割負担:多くの方が該当(年金収入のみの方など)
- 2割負担:本人の合計所得金額160万円以上(単身で年金収入のみなら280万円以上)
- 3割負担:本人の合計所得金額220万円以上(単身で年金収入のみなら340万円以上)
判定は世帯の収入状況によって変わるので、詳しくはお住まいの市区町村や地域包括支援センターで確認してください。
要介護度ごとの利用限度額(月額・1割負担の場合)
利用できる介護保険サービスには、要介護度ごとに上限額があります。これを超えると、超過分は全額自己負担になります。
- 要支援1:約5,000円
- 要支援2:約10,000円
- 要介護1:約17,000円
- 要介護2:約20,000円
- 要介護3:約27,000円
- 要介護4:約31,000円
- 要介護5:約36,000円
(目安、2026年現在の概算)
これだけ使えば、訪問介護・デイサービスを組み合わせた在宅介護がそれなりに続けられます。
制度で支えられている部分
ここからが、知っているとお得な話です。介護費用には、負担を軽くする制度がいくつもあります。
高額介護サービス費
月々の介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。
たとえば、一般所得者なら月の自己負担額の上限は44,400円(2026年現在)。これを超えた分は、申請すれば戻ってきます。
「気づかず払いすぎた」というケースは多いので、ケアマネさんに確認してみてください。
高額医療・高額介護合算制度
1年間(8月〜翌7月)の医療保険と介護保険の自己負担額を合算して、世帯所得に応じた上限を超えた分が、申請により還付される制度です。
- 一般所得世帯:年間56万円が上限
- 非課税世帯:年間31万円が上限
- 現役並み所得者:年間67万〜212万円(所得区分による)
医療費と介護費用が両方かかっている家族には、大きな救済になります。
介護休業給付金
介護のために仕事を休んだ家族が受けられる、雇用保険の給付金です。
- 対象家族1人につき、通算93日まで(3回に分けて取得可)
- 給与の67%が給付される
- 「家族介護をしている家族」(子・配偶者・親など)が対象
これは「介護を理由に仕事を休む」家族のための制度。本人の介護費用ではなく、家族側のサポートです。
障害者控除・医療費控除
税金面でも、介護費用の負担を軽くする仕組みがあります。
- 障害者控除:要介護認定を受けた家族について、税務上の障害者として控除を受けられる場合がある(市区町村の認定が必要)
- 医療費控除:介護保険サービスの一部、おむつ代(医師の証明がある場合)などが、医療費控除の対象になる
これらは確定申告で申請します。ケアマネさんや税務署に相談してみてください。
無理のないケアプランの組み方
ここまでの内容を踏まえて、実際にどうケアプランを組むかを考えてみます。
ステップ1 本人の収入・資産を把握する
まず、本人の月々の年金収入、貯蓄、所有資産を整理します。「いくら使える」を明確にしないと、ケアプランの判断ができません。
ステップ2 月々の介護費用の上限を決める
本人の収入から、生活費(食費・光熱費・医療費など)を差し引いた残りが、介護費用にあてられる金額。この範囲で、ケアプランを組みます。
ステップ3 ケアマネジャーと相談する
「うちはこれくらいの予算でやりたい」とケアマネさんに伝えると、その範囲で無理のないケアプランを提案してくれます。あれもこれも使うのではなく、本当に必要なものに絞ることが大事です。
ステップ4 制度を活用して負担を軽くする
高額介護サービス費、合算制度、各種控除を活用すれば、実質的な負担はさらに軽くなります。申請手続きが必要なものは、ケアマネさんや市区町村に相談してください。
💡 ここがポイント
ケアマネジャーは、ケアプランを組むプロです。「経済的に無理なく続けられる範囲で」と伝えれば、それに合わせて提案してくれます。お金の話はしにくいかもしれませんが、隠さずに伝える方が、結果的にいいケアプランが組めます。
経済的に厳しい場面が出てきたら
ここまでお伝えしたのは、本人の収入・資産で無理なく介護を続けるための考え方です。とはいえ、状況は人それぞれ。経済的に難しい場面が出てくることもあります。
そんな時は、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。状況に応じた選択肢を、一緒に考えてくれます。一人で悩まず、専門家の力を借りるのが、ゆる介護の基本です。
介護費用だけでなく、家計全体の見直しも
介護が始まると、本人の生活も変わります。本人が使わなくなった携帯プラン、必要性が変わった保険、利用頻度の減ったサブスクサービス、運転をやめた後の自家用車——本人にとっての必要性が変わるものは、意外と多いものです。
介護費用そのものを抑えるだけでなく、家計全体を見直す機会として捉えると、長く続けるためのゆとりが生まれます。介護期は、家計を整理するいいタイミングでもあります。
これについては、別の記事で詳しくご紹介します。
おわりに
介護費用について、押さえておきたいポイントをまとめると、
- 本人の収入・資産でまかなえる範囲で、ケアプランを組むのが基本
- 介護保険サービスの自己負担は1〜3割、要介護度ごとに利用限度額がある
- 高額介護サービス費・合算制度で、負担に上限がある
- 介護休業給付金・各種控除も活用できる
- 困った時はケアマネ・地域包括支援センターに相談
「介護はお金がかかる」というイメージは、半分は正しく、半分は誤解です。確かに無視できない金額がかかりますが、制度で支えられている部分も大きい。知っているか知らないかで、負担は大きく変わります。
このサイト「ゆる介護」では、3本柱のひとつに「福祉を使い倒す」を掲げています。介護費用についても、制度を理解し、賢く活用することで、無理なく続けられる介護を一緒に考えていけたらと思います。
このサイトでは、介護費用のほかにも、訪問介護・デイサービス・訪問看護・ショートステイ・福祉用具レンタルなど、家族の介護を支える具体的なサービスを、一つずつご紹介しています。


