トイレの困りごと、道具で軽くなる。排泄を助ける福祉用具

トイレの困りごと、道具で軽くなる。排泄を助ける福祉用具

介護のなかで、いちばん扱いが難しいのが、排泄のことかもしれません。本人にとって、これほどデリケートで、尊厳に関わることはありません。親は、いくつになっても親。子どもには見られたくない——そう感じるのは、とても自然なことだと思います。

だからこそ、道具の力を上手に借りて、本人の「自分でできる」という尊厳を、できるだけ長く守ってあげたい。この記事では、利用者側だった私の思いも交えながら、排泄を助ける福祉用具について、やさしくお伝えします。

排泄の介助は、尊厳に関わる ── まず大切にしたいこと

排泄は、人間にとって、もっともプライベートな行為です。それを他人の手にゆだねることは、多くの高齢者にとって、自尊心を傷つけられるつらい経験になります。特に、家族に対しては複雑です。配偶者になら、ぎりぎり頼めても、子どもには知られたくない——そんな気持ちを持つ方は、少なくありません。

私が大切だと思うのは、介助を、段階的に考えることです。いきなり家族が全部を抱え込むのではなく、まずは本人が自分でできるところを、無理なく続けられるようにする。それが難しくなってきたら、ヘルパーさんなど、プロの手を借りる。それでも難しくなったときに、はじめて家族が、というように。家族が最初からすべてを背負う必要はないのです。

そして、もうひとつ。デリケートな問題だからと、気にしすぎるのも考えものです。排泄は、生きて生活していれば、誰にとっても当たり前のこと。過剰に構えず、でもさりげなく配慮する。その絶妙なバランスを取りながら、うまくつきあっていく。そのために、福祉用具は大きな助けになります。

ポータブルトイレは「自分でできる」を守る道具

排泄の福祉用具の代表が、ポータブルトイレです。これは、ベッドのそばなどに置ける、持ち運び可能な簡易トイレのこと。トイレまで歩くのが難しくなっても、部屋の中で、自分の力で排泄できるようにしてくれます。

ここが大事なところです。ポータブルトイレは、「おむつにする前の、大切な選択肢」です。座ることさえできれば、おむつに頼らず、自分でトイレができる。その「自分でできた」という感覚が、本人の心を、どれだけ支えることか。おむつは最後の手段と考えて、まずはこうした道具で自立を守ることを、考えてみてほしいと思います。

加えて、実用面のメリットも大きいです。夜間にトイレまで歩く途中での転倒を防げますし、トイレまで付き添う介護者の負担も、ぐっと軽くなります。本人にも家族にも、やさしい道具です。

ポータブルトイレの選び方

ポータブルトイレは、種類が豊富です。本人の状態に合わせて選ぶポイントを挙げます。

  • 高さ・大きさ:本人の体格に合い、座った姿勢が安定するもの。立ち座りのしやすさに直結します
  • 背もたれ・肘掛け:座位を保ちにくい方には背もたれを。肘掛けは立ち座りの支えになります
  • 肘掛けの跳ね上げ:片側を上げられるタイプは、ベッドや車いすからの移乗がスムーズです
  • 蹴り込みスペース:便座の下に足を引ける空間があると、立ち上がるとき前に転びにくくなります
  • 重さ:軽いものは動かしやすい反面、安定感に欠けることも。安定を優先するなら、ある程度重いものを

入浴用具と同じく、本人の状態は変わっていくので、高さ調節ができるものなど、変化に対応できるものを選ぶと長く使えます。

快適さと、ニオイへの配慮という「優しさ」

ポータブルトイレには、本人の快適さを高める機能もあります。温水洗浄は、紙で拭くより肌にやさしく、清潔を保てます。暖房便座は、冬場の冷たさをやわらげ、ヒートショック(急な温度変化による体への負担)の予防にもなります。座り心地のよいソフト便座は、やせて長時間座るのがつらい方に向いています。

そして、忘れてはいけないのがニオイへの配慮です。これは、単なる快適さの問題ではありません。ニオイは、本人の羞恥心に、直接つながるからです。「臭うかもしれない」という不安から、トイレを我慢したり、遠慮したりしてしまう——それは避けたいことです。

脱臭機能のついたポータブルトイレや、凝固剤・処理袋・消臭剤といった便利グッズを使えば、ニオイはぐっと抑えられます。本人が気づいていないときでも、まわりがさりげなくケアしてあげる。それが、本人の尊厳を守ることにつながりますし、来客など、訪ねてくる人への配慮にもなります。ニオイのケアは、いちばん静かな優しさかもしれません。

介護保険で購入できる(特定福祉用具)

ポータブルトイレは、介護保険を使って購入できます。肌に直接触れる衛生用品なので、レンタルではなく「特定福祉用具販売」という区分での購入になります。

要支援・要介護の認定を受けていれば、年間10万円の枠内で、自己負担1〜3割で購入できます。ただし、都道府県の指定を受けた事業者から買うことが条件で、一般の通販やホームセンターで買うと対象外になることがあります。また、購入前の事前申請が必要な自治体も多いので、必ず先にケアマネジャーに相談してください。「よかれと思って先に買ったら、給付されなかった」という失敗を防げます。

状態が進んだときの、ほかの排泄用具

本人の状態によっては、ほかの道具が合うこともあります。知っておくと、選択肢が広がります。

補高便座は、今ある家のトイレに置いて座面を高くし、立ち座りをラクにするもの。まだトイレまで行ける方に向いています。排泄予測支援機器は、おなかに当てたセンサーで尿のたまり具合を知らせ、トイレのタイミングをつかむのを助ける、新しい機器です。そして、寝たきりに近い状態の方には、排泄物を自動で吸引する自動排泄処理装置もあります(排便機能つきは原則、要介護4以上が対象です)。

ひとつ知っておいてほしいのは、紙おむつは、介護保険の対象外だということ。おむつは消耗品として、別に購入することになります(自治体によっては独自の助成があります)。

道具で、排泄の尊厳を守る

排泄の介護は、本人にとっても家族にとっても、簡単なことではありません。でも、「自分でできた」という一つひとつの積み重ねが、本人の心と誇りを支えます。その「できる」を、道具の力で、少しでも長く守ってあげてほしいと思います。

プライバシーに配慮して、つい立てやカーテンで目隠しをする。ニオイを、さりげなくケアする。そうした小さな心づかいと、道具の組み合わせで、排泄は「つらいこと」から「うまくつきあえること」に変わっていきます。どの道具が合うか迷ったら、福祉用具専門相談員やケアマネジャーに、遠慮なく相談してください。

ほかの福祉用具については、福祉用具って何がある?介護を助ける道具を、利用者目線でまるごと紹介で全体像を紹介しています。家族の介護に、新しい続け方を。デリケートな排泄のことも、気負いすぎず、道具と上手につきあいながら、続けていけますように。

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