お出かけが好きな家族。散歩や買い物に出かけてくれるのは元気な証拠で、うれしいことです。でも一方で、「道に迷わないか」「ちゃんと帰ってこられるか」が心配になる──。認知症のある方がいる家庭では、特に切実な悩みではないでしょうか。
そんなときに頼れるのが、GPS端末による見守りです。ただ、GPSは「買えば安心」というわけではなく、本人に”持って出てもらう”ための、ちょっとした工夫が必要になります。この記事では、そのコツも含めて解説していきます。
GPSは「居場所を追う」だけの道具じゃない
GPSと聞くと、「行方が分からなくなったときに、居場所を探すもの」というイメージが強いかもしれません。もちろん、それは大事な機能です。道に迷ったとき、指定したエリアの外に出たときに通知が届き、早期発見につながります。
でも、GPSの価値はそれだけではありません。もうひとつ、見落とされがちな大きなメリットがあります。それは、行動範囲や行動量の変化に気付けることです。
いつも歩いていた距離が短くなった、外出の回数が減った、行き先が限られてきた──こうした変化は、体調や介護度の変化のサインであることがあります。GPSの移動履歴が積み重なっていれば、そうした”じわじわとした変化”を早めに掴めて、ケアマネジャーへの相談や、生活の見直しのきっかけにできます。「見守り」と「気付き」を、同時に叶えてくれる道具なのです。
子ども向けGPSが、そのまま使える時代になった
意外に思われるかもしれませんが、いま高齢者の見守りに使えるGPSの多くは、もともと子ども向けに進化してきた製品です。
ランドセルに入れて子どもの通学を見守る──そんな用途で普及したGPS端末は、この数年で驚くほど進化しました。小型・軽量で、バッテリーは1回の充電で1ヶ月以上持つものもあり、月額料金も500円前後と手頃。位置情報の精度も上がっています。
「みてねみまもりGPS」「あんしんウォッチャー」といった人気の子ども向けGPSは、そのまま高齢の家族の見守りにも使えます。カバンや衣類に付けておくだけで、離れて暮らす家族がスマホから居場所を確認でき、指定エリアを出ると自動で通知が届く。子ども向けだからと侮れない、頼れる選択肢です。
いちばんの課題は、「持って出てくれるか」
ところが、GPSには大きな壁がひとつあります。それは、本人が持って出てくれるとは限らないということです。
特に認知症が進んでくると、「GPSをカバンに入れておいたのに、別のカバンで出かけてしまった」「玄関に置いておいたのに、持たずに出た」ということが起こります。これでは、せっかくの端末も意味をなしません。
だからこそ、GPS選びで本当に大事なのは、性能や価格よりも、「意識しなくても、自然に身についているか」。この視点で選ぶと、失敗が減ります。
そっと持ってもらう、4つの方法
本人に負担をかけず、自然に身につけてもらうための方法を、4つご紹介します。
1. 靴・インソール型:持ち忘れが起きない
いちばん確実なのが、靴に仕込むタイプです。GPS端末を靴のかかとやインソール(中敷き)に内蔵しておけば、出かけるときには必ず身についている状態になります。持ち忘れが構造的に起きないのが、最大の強みです。
専用シューズのタイプ(「iTSUMO」「うららかGPSウォーク」など)もあれば、いま履いている靴に仕込めるインソール型もあります。最近は、子ども向けの見守りとしても売られている「GPSを隠せるインソール」があり、これは高齢の家族にもそのまま使えます。
2. お守り・キーホルダー型:さりげなく渡せる
キーホルダーやお守りの形をした小型GPSを、いつも持ち歩くカバンや財布につけておく方法です。「素敵なキーホルダーだから」「お守りだよ」と、見守りの道具だと意識させずに渡せるのがポイント。
ただし、カバンを変えると持ち出せない弱点はあるので、「いつも同じカバン」の方に向いています。
3. 衣服・カバン装着型:普段使いに紛れさせる
上着のポケットや、カバンの内ポケットに入れておくタイプです。「あんしんウォッチャー」などの小型GPSがこれにあたります。軽くて薄いので、普段の持ち物に自然に紛れます。
衣服に付ける場合は、よく着る上着を選ぶこと。季節で着替えると外れてしまうので、そこだけ注意が必要です。
4. 見守りタグ型:手軽に試したいなら
まず手軽に始めたいなら、小型の見守りタグから試すのもひとつ。安価で導入しやすく、「GPSってどんな感じか、まず使ってみたい」という段階に向いています。
タグ型は、リアルタイムの追跡には向かないものもあるので、用途(日々の安否確認なのか、徘徊時の追跡なのか)を確認してから選びましょう。
「黙って持たせる」だけは、しないでください
方法をご紹介してきましたが、ひとつだけ、大事なお願いがあります。
本人に黙ってGPSを持たせる(=ステルスで使う)のだけは、やめてください。心配のあまり、つい黙って仕込みたくなる気持ちは分かります。でも、大人は必ず、いつか気づきます。「勝手に居場所を追われていた」と知ったとき、家族への信頼は大きく崩れてしまいます。
大事なのは、伝え方です。「監視したいわけじゃなくて、心配だから安心したいだけ」──そんな家族の側の素直な気持ちとして伝えると、受け入れられやすくなります。「お守りとして持っていてね」「防犯のために、家族みんなで持とう」という渡し方も効果的です。
GPSは、本人の自由なお出かけを”制限する”ための道具ではありません。むしろ、安心して出かけ続けてもらうための、お守り。その気持ちが伝われば、きっと自然に受け入れてもらえます。
介護保険や助成が使えることもある
最後に、知っておくとお得な情報を。GPSによる徘徊対策には、介護保険や自治体の助成が使える場合があります。
たとえば靴型GPSの「iTSUMO」などは、福祉用具レンタルとして介護保険の対象になる自治体があります。また、市区町村によっては、GPS端末の購入費や通信費の一部を独自に助成しているところもあります。
使えるかどうかは、お住まいの地域によって変わります。まずは担当のケアマネジャーや、地域包括支援センターに「GPSの見守りに、介護保険や助成は使えますか?」と聞いてみるのがおすすめです。全額自己負担で買う前に、一度確認してみる価値があります。
まとめ:GPSは「監視」ではなく「お守り」
GPSは、本人を縛るための道具ではありません。本人が気持ちよくお出かけを続けられて、家族も安心できる──その両立のための道具です。
家族の介護に、新しい続け方を。「出かけないで」と言う代わりに、「行ってらっしゃい」と送り出せる。GPSが、そんな毎日の助けになればうれしいです。


